京都醸造を退職するクリスからのごあいさつ

約半年前の5月にこのブログで、私クリスが2023年をもって、京都醸造を去る決意をしたことをお伝えしました。そして、まだ信じがたいことですが、先日12月15日が私の京都醸造での勤務、最終日でした。

過去8年以上、京都醸造でビール造りに携わってきた中で、誇りに思うことはたくさんあり、会社に注ぎ込んだあらゆる努力と献身に一切の後悔はありません。

ふりかえれば、醸造所を始めたとき、この業界にポジティブな変化をもたらし、それを引っ張っていくような存在になることが私たちの目標の一つでした。今でも自信を持って言えるのは、京都醸造はそこに向かって着実に進んでいるということです。理想的な世界では、同じ志を持って会社を始めた私たち3人がその目標を達成する瞬間まで一緒にいられるだろうと思っていました。私が退くことによって、その光景が実現しないのは残念なことですが、ベンとポールが私がいた頃には考えられなかったくらい大きな成功に京都醸造を導くだろうという確信に近い自信をもってこの最終日を迎えました。

私からは最後になりますが、これまで京都醸造を厚くサポートしてくれたすべての人々に深く感謝したいと思います。コロナ禍で行き先不透明な状況の中でも、私たちに対して偉大な献身を見せてくれた働き者のスタッフなしには何も達成できませんでした。また、業界の仲間たち、ビアバーや飲食店、また醸造所同士で交流のあった仲間たちからこれまでもらった厚いサポートには感謝してもしきれない思いです。彼らがいなければ、京都醸造だけでなく個人として今日の到達点まで成長することはできませんでした。そして、最後に感謝を伝えたいのは、いつも私たちのビールを楽しんでくれて、京都醸造を日常の一部としてくれたお客様です。ありがとう!私がこれまでで最も嬉しかった思い出の一つは、お客様から「KBCのビールを飲んでクラフトビールに興味を持った」と言ってもらったことでした。私たちが造ったものでこの業界に対する人々の考え方が変わったというのは何にも代えがたいほど光栄なことです。

では、これから私はどこに向かうのでしょうか?
これまでもこれからも私の中で一貫して変わらぬものがあります。それは、醸造への愛です。私は確実に国内のこの業界に留まるつもりですが、それがいつ、どこで、そして自分自身のためなのか他の誰かのためなのかは、まだ何も決まっていません。今のところ、唯一決まっていることは、まず十分な休息をとることで、その間に私の醸造家としてのキャリアについてや、具体的な次のステップを考えるつもりです。次のステップが決まるまでの間に、もしも国内のどこかのビアバーやボトルショップで私を見かけることがあれば、ぜひ気軽に声をかけてくださいね。一緒に乾杯しましょう!

クリス

---------------------------------------------------------------------------------------------------------


私たちは長い間、ある日クリスが京都醸造から去ってゆくことを知っていました。が、そのことに対して何かを備えていたわけではありませんでした。

5月に彼の去就を事前に公表したことで、周りから「クリスのようなヘッドブルワーをどうやって見つけるのか?」と尋ねられることが当然多くなりました。

そうした問いへの私たちの答えは、「見つけることはできない」。京都醸造の創設者であり、会社の役員であるクリスは、この会社の代表として非の打ちどころのないような存在でした。そして、醸造チームを率いるリーダーとしても、彼ほど責任感の強い人はいないでしょう。また醸造家として、彼は国内でも最高の一人であると私は自信を持って言えます。そして何より私たちにとっては、二十年以上にわたる親友であり、志を共にし冒険に繰り出した仲間でもあります。

そうしたことから、クリスが会社を去ることを決めたと私たちに告げた時、私たちは単に彼のような存在を別の人に置き換えるようなことは到底できないと考えました。それはつまり、残された私たちは新しい方向に進む必要があると決意した瞬間でした。

京都醸造を起ち上げたとき、まさかこんな日が来るとは想像していませんでした。多くのスタートアップ企業で早々にメンバーが変わるという傾向があるとしても、私たちの場合は三人で一緒に冒険に繰りだしたこともあり、その後だれか一人が独自の道を歩む可能性についてはあまり考えていませんでした。とある日、クリスが会社を去ることを打ち明けてくれたとき、大きなショックを受けましたが、同時に私の中で一部どこか嬉しいという気持ちになりました。というのも、彼は常に他人を最優先にし、これは彼が自分のために初めて決断した瞬間でした。自分が好きなことをすること、そしてそれを楽しむことは何よりも大切なことです。

彼が去る日、それは何よりも悲しい日のように感じるかもしれませんが、同時に新しい挑戦を意味する一歩でもあります。京都醸造にとっても、クリス本人にとっても大きな新しい挑戦が始まります。それでもこの現実を受け入れるのには相当時間がかかりましたが、今ではこれから私たちを待ち受けることにドキドキ、ワクワクするような気持ちです。(これからの挑戦について詳しくは、先数カ月にわたって共有していきます。)また、京都醸造を離れた後のクリスに対しても同じような気持ちです。彼がこれからのステップをまだ決めていないとしても、個人的にはいつかまた彼自身の醸造所を始めてほしいと願っています。それは彼が考える規模で、自分が作りたいと思うビールを作る醸造所です。あのクリス・ヘインジが造ったビールがまた日本で販売されるぞとなると、私たちも一番乗りで駆け付け、そしてその後ろの行列にはきっと京都醸造時代の顔なじみのメンバーがずらりと続いていることでしょう。

クリス、心よりありがとう!そして幸運を祈っているよ!

ポール、ベン、KBCチーム